ファラデーの伝その1
作品:ファラデーの伝〜電気学の泰斗
作者:愛知敬一
序
偉人の伝記というと、ナポレオンとかアレキサンドロスとか、グラッドストーンというようなのばかりで、学者のはほとんど無いと言ってよい。なるほどナポレオンやアレキサンドロスのは、雄であり、壮である。しかし、いつの世にでも[#「いつの世にでも」に傍点]ナポレオンが出たり、アレキサンドロスの出ずることは出来ない。文化の進まざる時代の物語りとして読むには適していても、修養の料にはならない[#「修養の料にはならない」に傍点]。グラッドストーンのごときといえども、一国について見れば二、三人あり得るのみで、しかも大宰相たるは一時に一人のみ[#「一時に一人のみ」に傍点]しか存在を許さない。これに反して、科学者や哲学者や芸術家や宗教家は、一時代に十人でも二十人でも存在するを得、また多く存在するほど文化は進む[#「また多く存在するほど文化は進む」に傍点]。ことに科学においては、言葉を用うること少なきため、他に比して著しく世界的に共通で[#「世界的に共通で」に傍点]、日本での発見はそのまま世界の発見であり、詩や歌のごとく、外国語に訳するの要もない。
底本:「ファラデーの傳」岩波書店
1923(大正12)年5月15日第1版発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
その際、以下の置き換えをおこないました。
「佛蘭西→フランス 伊太利→イタリア 伊→イタリア 伊国→イタリア 瑞西→スイス 佛国→フランス 希臘→ギリシャ 獨→ドイツ 獨逸→ドイツ 獨国→ドイツ 佛→フランス 瑞→スイス 墺→オーストリア 巴里→パリ 羅馬→ローマ 土耳古→トルコ 白耳義→ベルギー 亜米利加→アメリカ 墺地利→オーストリア 瑞典→スウェーデン 英→イギリス 埃及→エジプト 瓦斯→ガス 硝子→ガラス 土蛍→ミミズ 沃素→ヨウ素 金剛石→ダイヤモンド 志→シリング シルリング→シリング 磅→ポンド 基督→キリスト 蝋燭→ロウソク 蒼鉛→ビスマス 護謨→ゴム 鍍金→メッキ 吋→インチ 呎→フィート 弗素→フッ素 暫く→しばらく 殆ど→ほとんど 或る→ある 成るほど→なるほど 何時→いつ 如き→ごとき 雖も→いえども 又→また 殊→こと 先ず→まず これ等→これら 委しく→くわしく 迄も→までも それ故→それゆえ 是等→これら 宛も→あたかも 於て→おいて 如何に→いかに 終い→しまい 斯く→かく 此の→この 為す→なす 僅か→わずか 貰→もら 其→その 澤山→たくさん 只→ただ 兎に角→とにかく 啻→ただ 極く→ごく 未だ→まだ 夫故→それゆえ 及び→および 併し→しかし 最う→もう 且つ→かつ 斯様→かよう 即ち→すなわち 却って→かえって 之れ→これ 俤→おもかげ 勿論→もちろん 可なり→かなり 頤→あご 篏め→はめ 一寸→ちょっと 抑→そもそも 然し→しかし 幾分→いくぶん 何れ→いずれ 最早→もはや 若し→もし 遂に→ついに 直ぐ→すぐ 尤も→もっとも 益々→ますます 已に→すでに 依る→よる 之れ→これ 大抵→たいてい 更に→さらに 儘→まま 筈→はず 不図→ふと 唯→ただ 撓む→たわむ 成程→なるほど 折角→せっかく 皆→みな 以て→もって 此處、此所→ここ 有難う→ありがとう お休み→おやすみ 殊更→ことさら 亦→また 乃至→ないし 了つた→おわった 復た→また 復び→ふたたび 流石→さすが 所謂→いわゆる 寧ろ→むしろ 然る→しかる 重な→おもな 斯かる→かかる 則ち→すなわち 此度→このたび 尚ほ→なお 云う、云える、云い、云った、云われて→いう、いえる、いい、いった、いわれて 居った、居る→おった、いる」
また読みにくい漢字には適宜、底本にはないルビを付けました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:松本吉彦、松本庄八
校正:小林繁雄
2006年11月20日作成
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)聳《そび》ゆる
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)化学|叢話《そうわ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)電磁気※[#「廴+囘」、第4水準2-12-11]転
〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)アカデミー 〔Acade`mie.〕 学士院。
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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