夜行巡査その1
作品:夜行巡査
作者:泉鏡花
一
「こう爺《じい》さん、おめえどこだ」と職人体の壮佼《わかもの》は、そのかたわらなる車夫の老人に向かいて問い懸《か》けたり。車夫の老人は年紀《とし》すでに五十を越えて、六十にも間はあらじと思わる。餓えてや弱々しき声のしかも寒さにおののきつつ、
「どうぞまっぴら御免なすって、向後《こうご》きっと気を着けまする。へいへい」
底本:「高野聖」角川文庫、角川書店
1971(昭和46)年4月20日改版初版発行
1999(平成11)年2月10日改版40版発行
初出:「文芸倶楽部」
1895(明治28)年4月
入力:真先芳秋
校正:鈴木厚司
1999年9月10日公開
2005年12月4日修正
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《》:ルビ
(例)爺《じい》さん
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(例)人|心地《ごこち》
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(例)[#地付き](明治二十八年四月「文芸倶楽部」)
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