青木の出京その118
作品:青木の出京
作者:菊池寛
「どうだい、君や桑野は勉強しているかい。外国のものなんか、盛んに読んでいるだろうな」と、妙に皮肉に挑戦的にきいた。それは、昔の青木とほとんど変っていなかった。そうした青木の攻撃的《アグレシヴ》な言葉に、今でも妙な圧迫を感ずるのを雄吉は自分ながら不快に思った。青木と雄吉との間に起った交渉、それを雄吉は胸に彫りつけているのに、青木はそれをけろりと忘れたように、雄吉に対して、それに対するなんの遠慮も、払っていないらしかった。
底本:「菊池寛 短篇と戯曲」文芸春秋
1988(昭和63)年3月25日第1刷発行
入力:真先芳秋
校正:林めぐみ
1999年1月6日公開
2005年10月17日修正
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