青木の出京その36
作品:青木の出京
作者:菊池寛
センチメンタルで、ロマンチックで、感激家であった雄吉が、突然青木の身の上に振りかかった危難を知って、極度に感激したのは、むろんのことであった。彼は、どんなことがあっても、青木を救ってやらねばならぬと思った。雄吉にとって、青木を救う唯一の手段は、やっぱり、今自分が世話になっている近藤家の金力に、すがるよりほかはなかった。雄吉は、そう考えると、その日学校から帰ると、自分が家庭教師兼書生といったような役回りをしている近藤家の主人に、涙を流さんばかりに青木の救済を頼んだ。
底本:「菊池寛 短篇と戯曲」文芸春秋
1988(昭和63)年3月25日第1刷発行
入力:真先芳秋
校正:林めぐみ
1999年1月6日公開
2005年10月17日修正
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