青木の出京その2
作品:青木の出京
作者:菊池寛
それは六月にはいって間もない一日であった。銀座の鋪道の行路樹には、軽い微風がそよいでいたが、塵をたてるほど強いものではなく、行き交《こ》うている会社員たちの洋服はたいてい白っぽい合着に替えられて、夏には適《ふさ》わしい派手な色のネクタイが、その胸に手際よく結ばれていた。また擦れ違う外国の婦人たちの初夏の服装の薄桃色や水色の上着の色が、快い新鮮《フレッシュネス》を与えてくれた。
底本:「菊池寛 短篇と戯曲」文芸春秋
1988(昭和63)年3月25日第1刷発行
入力:真先芳秋
校正:林めぐみ
1999年1月6日公開
2005年10月17日修正
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