青木の出京その41
作品:青木の出京
作者:菊池寛
「じゃまあ! 近藤氏の世話にでもなるか。学校なんかどうだっていいのだが、好き好《この》んでよすにも当らないからな」と、いつものように、傲岸にいい放ちながら、にやりと青木に特有な、皮肉な、人を頭から嘲《あざけ》っているような、苦笑をもらした。雄吉は、自分の全心を投じた親切を、青木のために、こんなに手ひどく扱われながら、それでも青木が、とうとう自分の親切を受け入れてくれて、自分の崇敬|措《お》く能わざる青年哲学者の危急を救い得たことを、無上の光栄のように欣んでいた。
底本:「菊池寛 短篇と戯曲」文芸春秋
1988(昭和63)年3月25日第1刷発行
入力:真先芳秋
校正:林めぐみ
1999年1月6日公開
2005年10月17日修正
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